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ロータス・カルテット CDレヴュー | |||||||
ヴァンハル:弦楽四重奏曲
ハ短調 op.1-4, 変ホ長調, ヘ長調, イ長調 op.33-2 |
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独クラシック・ホイテCD批評 クラシック・ホイテ推薦ディスク 演奏:ロータス・ストリング・カルテット ヨハン・バプティスト・ヴァンハル〈4つの弦楽四重奏曲〉 レーベル:cpo 777475−2 1CD 79分 2009年 芸術的クオリティ10点 音質10点 全体の印象10点(全て10点満点中) ヨーゼフ・ハイドンへの敬意から誰も軽々に口にしないが、ハイドンの存命中、この「古典派音楽の父」の作品にレベル的に比肩しうる楽曲を残した作曲家たちがいたのは事実である。ヨハン・バプティスト・ヴァンハル(1739〜1813)は1780年代、当時躍進目覚ましかった交響曲と弦楽四重奏曲の領域から手を引き、より単純だがより聴衆受けの良いジャンルに方向転換した。が、その前には弦楽四重奏というジャンルを確立したハイドンの作品と並び、聴くに値する弦楽四重奏曲を書いている。 本CDでは、ロータスが100ほどもあるヴァンハルの弦楽四重奏曲(因みに、量だけ見ればハイドンを凌駕!)から4作品を演奏している。4作品は1769年から1786年の間に書かれたもので、つまりこのボヘミア人作曲家が世に知られてから、彼が自ら作曲の幅を狭めるまでの期間をまたぐもの。もしこの4曲をそれと知らずに耳にしたなら、すぐにハイドンのあまり知られていない作品だと思っても不思議ではない。それほど作りは確かな仕上がりになっており、想像力に富む独創性を備え、また深い感情も漂わせている。まさに、この情感の深さこそがヴァンハルの作品(少なくともこのCDに収められた4曲)を、彼の弟子であるイグナーツ・プライエルの四重奏とは異なるものとしている。プライエルについては、ケルンのプライエル・カルテットが先ごろ(同じくcpoから)何曲かを出したところだ。プライエルはある意味奇異なほど何ら動じることなく、ひたすらに音を奏でるのに終始していたが、ヴァンハルは激情をも感じさせる一面を持つ。例えば1786年作の変ホ長調における振動するエネルギーや、1769年のハ短調における程よい深刻さなどである。また他方では、1785年のイ長調作品33/2の第1楽章のように個人的な内省も漂わせる。 しかしながら、ひょっとすると年長のヴァンハルのカルテットよりも弟子であるプライエルの作品の方が、聴いて気持ちがより落ち着くと感じるかもしれない。というのも、ロータスはヴィブラートも使って演奏しており、それによって本物の響きを作り上げているから。プライエル・カルテットがヴィブラートの少ない演奏を自らに課していたのとは対照的である。ここでは、ロータスの持つ幅の広さが大きな利点になっていると言える。更に、ヴィブラートは程よく按配されて、イントネーションには終始一点の曇りもなく、そして非常に美しく極めて洗練されたアンサンブル全体の響きは決して陰ることがない。日本人女性3人と2005年に第2バイオリンとして加わったドイツ人からなるカルテットは、豊かな響きと、自在な感情、情動の表現によって、どこまでも広がっていけるスケールを持ち、これらの名曲にいわば三次元的な立体感を与えることができるのだ。それによってこの音楽は心地よく、即ちモーツァルトのように直接的にではなく、また少し後のベートーヴェンのようにセンセーショナルでもないが、快く心に沁みてくるのである。聴くに喜ばしい一枚。 評:ミヒャエル・B・ヴァイス 2014年11月24日 |プロフィール|トップページ| |
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