音楽の友 '09 7月号
ヴァイオリンの久合田緑とピアノの阿部裕之による「メンデルスゾーン生誕200周年記念」と銘打たれたコンサートでは、この作曲家のヴァイオリン・ソナタ全3曲と姉ファニーの「ヴァイオリンとピアノのためのアダージョ」という滅多に実演で接する機会がない曲が演奏された。まさに記念年ならではのプログラムである。冒頭に阿部のソロで「ロンド・カプリチオーゾ」という比較的広く知られた曲も演奏されたが、全体としてはかなり地味なプログラムながら、小さな会場とはいえほぼ満席の状態だったのは、KCMコンサート・シリーズのファンが定着してきたということなのだろう。演奏は、いずれも素直に作品の持ち味を伝える優れた内容で、音響的に恵まれず、特に弦楽器には厳しい会場のため、えてして力任せになることもすくなくないが、今回の2人はさすがにヴェテランらしく無理をせず、程良くコントロールを効かせてニュアンス豊かな表情を聴かせた。
5月22日・大阪倶楽部
(福本 健)
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