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2004年 6/16
漆原朝子のブラームス
〜ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 完全全曲演奏会〜
(2004年 6月3日 神戸新聞松方ホール)演奏会評
     
   
     

日本経済新聞 平成16年6月14日(月)夕刊 (音楽評論家 小石 忠男)

一昨年、シューマンのソナタ全曲で好評を博した漆原朝子が、今回はブラームス「ヴァイオリン・ソナタ全曲」に挑戦(3日、神戸新聞松方ホール)した。ピアノは前回と同じベリー・スナイダー。ソナタ3曲と「スケルツォ」を弾いたが、各作品の特色を鮮明に弾き分け、前回よりもさらに強い感銘をあたえた。
技術的にも一段と洗練され、ヴァイオリンは四弦のみごとに揃った音が美しい。しかも第一番ではゆとりのあるテンポをとり、清潔・平明な音楽を歌った。
ピアノもまったく虚飾のない音と表情で、柔軟な弦と対話したが、たとえば第一楽章の終結部では二人ともに加熱し、引き締まった造形の説得力が凄い。第二楽章の重音も朗々と歌い、音楽的な器量が大きい。
第二番は3曲中もっとも明朗な曲趣だが、ゆれるリズムがこまやかなニュアンスをあらわし、そのため第二楽章の甘美な旋律線は、もう魅力的としかいいようがない。青春の叙情を回想させる至福の時である。途中の急速な部分では、さらに切れのよさが欲しいが、終楽章とのバランスはよい。
休憩後は、まず「F・A・Eソナタのスケルツォ」が演奏された。はつらつとした音楽である。しかし、それよりも最後の第三番が当夜の圧巻となった。
ヴィブラートの処理も巧妙で、全体の構築にスケールの大きいドラマが現された。二人の演奏者息づまるような緊張と情熱の燃焼も、聴き手を離さない。とくに後半の二つの楽章の的確な高揚と、旋律の意味深さは感動的である。
漆原はブラームスの複雑で晦渋な趣を直感的にとらえ、一挺の楽器とは思えぬ交響的な響きで、その神髄に迫った。音構造も明快に整理されていたが、いま彼女は自身にみちた境地に到達したようである。
新聞画像



音楽の友8月号 (音楽評論家 中村孝義)

 これほどすがすがしく内的充実に満ちた演奏会に出会えることも、そうあるものではない。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ3曲をメインにした重いプログラムなのに、もたれるどころか瞬く間に時が過ぎる。その要因の第一は、漆原朝子の奏でる類稀な美しい音色と知情意のバランスの取れた表現。それにパートナーを務めたスナイダーも特筆すべき出来。出るべきところは出るが、決してヴァイオリンを覆い隠さず、作品の細部までを見極めた当意即妙さは、まさにこれぞ室内楽。条件が整えば、音楽はかくも見事に輝きを発するのだ。
 第1番では、漆原にまだ十全に自らのすべてを聞き切れないもどかしさが感じられたが、第2番ではそれも払拭。静謐感を湛えたこの曲からも豊かな起伏に満ちた劇的世界が浮かびあがった。後半になると両者の掛け合いはさらに密度を増し、スケルツァなど本当にスリリング。第3番もこの作品の劇的情感が何のてらいもなく表出され圧巻。いつまでもこの世界に浸っていたいという思いに駆られた素晴らしい一夜であった。(6月3日神戸新聞松方ホール)
 

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