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大谷 玲子 CDレヴュー
Polonaise!
ポーランド ヴァイオリン作品選集


◆ヴィトルト・ルトスワフスキ:
 ヴァイオリンとピアノのためのパルティータ(1984)

◆カロル・シマノフスキ:神話─3つの詩 作品30

◆ヘンリク・ヴィエニャフスキ:
 ・華麗なるポロネーズ ニ長調 作品4
 ・華麗なるポロネーズ イ長調 作品21
 ・レジェンド 作品17
 ・創作主題による変奏曲 作品15
 ・二つの特徴的なマズルカ 作品19

2011年3月10-12日
兵庫県・川西市みつなかホール/録音セッション
¥2,625(税込)WWCC-7682

NAXOS MUSIC LIBRARY

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ストリング '12. 1月号

 ヴァイオリニスト、大谷玲子によるアルバム第2弾である。
 2008年にリリースされたデビュー・アルバム「イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」は、各方面から高い評価を得た、非常に素晴らしいアルバムだったが、今回も前作に負けず劣らず完成度の高いものに仕上がっている。
 大谷は、桐朋学園大学音楽学部首席卒業、同大学研究科修了。ブリュッセル王立音楽院大学院に留学、文化庁在外芸術家研修員として学び、最優秀賞を得て首席卒業。ヴァイオリンを東儀祐二、曽我部千恵子、原田幸一郎、小栗まち絵、江藤俊哉、イーゴリ・オイストラフの各氏に師事。また、ヘルマン・クレバース、イフラ・ニーマン、ルジェーロ・リッチ、フランコ・グッリ、イダ・ヘンデル、イゴール・オジム、アナ・チュマチェンコら各氏の教えを受ける。1993年日本音楽コンクール第1位。増沢賞、海外コンクール派遣特別賞などを受賞。1996年ヴィニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール最高位入賞し(1位なしの単独2位)、同時にヴィエニャフスキの協奏曲、ポロネーズ、ソナタの各最優秀賞者賞などの多くの特別賞を受賞。
 今回大谷が取り上げた作品は、タイトルにあるとおり、ポーランドの作曲家による作品。どの作品も見事な演奏を聴かせているが、特にヴィエニャフスキは絶品と言えよう。共演は、岡本麻子(Pf.)。
 収録曲は、ルトスワフスキ:ヴァイオリンとピアノのためのパルティータ(1984)、シマノフスキ:神話〜3つの詩 Op.30、ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ ニ長調 Op.4、華麗なるポロネーズ イ長調 Op.21、レジェンド Op.17、創作主題による変奏曲 Op.15、2つの特徴的なマズルカ Op.19。



レコード芸術 '11 12月号 新譜月評 【準特選盤】

【推薦】実際に音楽会場で耳にしても、この人の光沢(つや)をおびた音色の美しさは忘れ難いものがある。その大谷玲子が、当盤ではルトスワフスキ、シマノフスキ、ヴィエニャフスキと、ポーランド人作曲家の作品ばかりを選んで弾いてる。ルトワフスキが1984年に書いた《パルティータ》は彼らしく神秘的な雰囲気を漂わせるものの、作風からはむしろ新古典主義的な「わかりやすさ」に立脚しており、いわゆる“聴きやすい”現代曲に属する。シマノフスキ作品からは《神話》の全3曲が選ばれ、ヴィエニャフスキ作品も、おそらく彼の最高作である《創作主題による変奏曲》のほか、《華麗なるポロネーズ》2篇、《伝説曲》《2つの特徴的マズルカ》(〈オベルタス〉と〈ドゥジアルツ〉)と佳曲が押し並ぶ。一般好楽家の耳にも、あまり高踏的にはなりすぎない、好選曲なのではあるまいか。大谷の演奏は、作品ごとによく神経を通わせ、シマノフスキの象徴的幻想性も、ヴィエニャフスキのロマンティックな郷土性も、それぞれふさわしく表出し得た佳演だと言えよう。ピアノの岡本麻子も、かねがね独奏家として日本国内のみならずドイツでも活動を重ねてきた人だけに、ヴァイオリニストと気息を通わせながら、行きとどいた好演ぶりを聴かせてくれる。総じて、これだけ充実した演奏内容を持つ「ポーランド・ヴァイオリン音楽集」は、ざらには聴けないものと思う。
(濱田滋郎)

【準】大谷玲子といえば、2008年のイザイの《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》全曲録音の秀逸な演奏が記憶に残っている。今回のアルバムにはポーランドの作曲家の作品が収録されている。タイトルは仏語の「ポロネーズ」だが、決して「ポーランド舞曲」をメインにした選曲ではない。この言葉には他に、「ポーランドの」や「ポーランド人」の意味もあるので、両者の意味合いで用いられているのだろう。聴きどころはルトスワフスキ自身も認める後期の傑作《ヴァイオリンとピアノのためのパルティータ》。岡本麻子のピアノとともにダイナミックでスケールの大きな演奏を披露している。第2、4楽章のアドリブ・セクションもスリリングな感興に満ちている。シマノフスキの《神話》はヴァイオリンの柔軟かつ明快な表現が悲劇的な物語の多彩なイメージを喚起させてくれるし、ピアノとの共演も含めて、情念や音色などの表出がよくまとまっている。より一層研ぎ澄まされた何かが欲しいとも思うが、ダイナミズムも個性だろう。後半はヴィエニャフスキの親しみやすい作品が並んでいる。《華麗なるポロネーズ》第2番作品21はピアノの序奏が高らかなファンファーレのように鳴り響き、ヴァイオリンもアクションが大きくて華やか。《2つの特徴的なマズルカ》では大谷の個性の魅力が良くでている。祝祭的で開放的、スラヴィックな野性味があり、ミツキエヴィチの『パン・タデウシュ物語』のダンス・シーンを彷彿させて楽しい。
(那須田務)




'11. 10月19日 毎日新聞 夕刊 私の3枚

ルトスワフスキ、シマノフスキ、ヴィエニャフスキの魅力的なバイオリン曲を並べる。個性ある趣向が、演奏者の思いをあやまたず伝える。
(磯山 雅)



ぶらあぼ '11. 11月号

1996年ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで最高位を受賞した大谷玲子。その縁もあるポーランドの作曲家3人のヴァイオリン作品集を、大谷は澄んだ伸びのある音で、実に丁寧に弾き込んでいる。ルトスワフスキ作品は、岡本麻子のピアノと共に緊張感のある演奏を展開。シマノフスキの佳品「アレトゥーザの泉」を含む「神話」全3曲が聴けるのは貴重。その不思議で妖しい世界が美しく表現されている。ヴィエニャフスキ作品では、完璧に弾きながらも技巧の誇示に走らぬよう、特に丁寧に臨んでいる。手垢の付かない作品の姿を実現させたことで、作品本来の楽しさや哀愁がダイレクトに伝わってくる。
(林 昌英)


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