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7月24日 朝日新聞 夕刊
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音楽の友 '10. 1月号 Concert
Reviews
群馬交響楽団東毛定期(第28回)
首席客演指揮者マルティン・トゥルノフスキーが、前夜はホームである群馬音楽センターで第459回定期演奏会、続けて同じプログラムによる東毛定期を指揮した。就任11年、81歳の巨匠が振る群響はバランスよく格調高く、名曲を名演で堪能させる。
前半はドヴォルザーク「チェロ協奏曲」で、ソリストに迎えたのはフランシス・グトン。オーケストラの透明感ある序奏は、独奏チェロの音色の予兆のよう。グトンの非凡さ完璧性は、鮮やかな指遣い、艶やかに柔らかい弓のさばき方でも一目瞭然、引き締まり、深く、せつなく、澄んだ響きが豊かに繰り出されて圧倒的な存在感だ。第3楽章、コンサートマスター長田新太郎との二重奏にも震撼させられた。後半は巨匠が愛し得意とするブラームスの「交響曲第4番」。ドヴォルザークの協奏曲では抑え気味だったオケを重厚で情感たっぷりに歌わせて、楽章の特徴が明瞭に示された。管楽器がよく響くホールでも、さらに美しさを際立たせたのが第4楽章のフルート・ソロ。哀愁漂う中にも暖かい調べが含まれて秀逸。全体にまとまりのよい快演であった。
11月22日・桐生市市民文化会館
(蓑嶋昭子)
音楽の友 '10.
1月号 Concert
Reviews
神奈川フィルハーモニー管弦楽団(第258回)
この月は2人の客演を迎えた定期。指揮がマルティン・トゥルノフスキー、独奏チェロがフランシス・グトンだった。そして曲目は、ウェーバー《オベロン》序曲、ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」、マルティヌー「交響曲第4番」を聴かせた。トゥルノフスキーがてきぱきと快調にすすめた《オベロン》序曲がまずは順当な滑り出しだったのだが、次のドヴォルザークが感興に溢れた。トゥルノフスキーの指揮は第1楽章冒頭からスケール感を漂わせる。主題旋律は野趣よりも洗練があり、導入されたチェロが馥郁として詩趣も豊かに歌っていく。音色は陶酔的な美音であり、技も煌めく。朗々と響かせながらフレージングのセンスはすこぶる好ましい。フランスのチェリストの血の内の美意識なのかもしれない。オケと呼応しての終楽章の妙技もすっかり堪能させた。トゥルノフスキーが一層濃密に聴かせたのは、マルティヌーだった。芳潤な抒情性を湛えた交響曲を、自国の曲とはいえ細密に聴かせていく。非常に繊細な音楽構築をみせる一方、極めてエネルギッシュでダイナミックな響きを造る。第3楽章ラルゴなど、弦や管にリリカルな歌も与えて上々。部分的に少々乱れはあったけれども。
11月14日・みなとみらいホール
(小山晃)
音楽の友 '09.
6月号
群馬交響楽団東毛定期(第28回)
群馬の年度末は東毛、本拠地の群馬音楽センター、すみだトリフォニーホールでの地方都市オーケストラフェスティバルと、3回連続公演が慣例化した。同じメンバーが同じプログラムで演奏してもライヴでありホールも違い、3夜追っかけのファンが存在するのも納得できるのだ。
指揮はチェコの巨匠にして首席客演指揮者のマルティン・トゥルノフスキー。80歳を迎えてより高潔に、かくしゃくたる姿勢でオケを率いる。最初はチャイコフスキーの幻想序曲《ロメオとジュリエット》で、せつなさ、激しさ、夢のような心地、そして悲劇の予感がドラマティックに響いた。プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」はソリストに期待の若手、チェコのヤロスラヴァ・ピエフォチョヴァーが招かれた。彼女のピアノは清冽で颯爽と動き回り、愛娘を見つめる慈父のような指揮者のもとでオケと息を合わせ、新鮮なプロコフィエフを聴かせた。
後半はドビュッシーの3つの交響的スケッチ《海》。フランス音楽をこよなく愛するという巨匠ならでは、ゆったりとうねるような弦部に金管、木管がきらめき、人生そのものの深遠を味わうようだった。
3月19日・桐生市市民文化会館
(蓑嶋昭子)
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