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エイドリアン・リーパー コンサートレヴュー


エイドリアン・リーパー & ロンドン・ギルドホール交響楽団
2017年11月22日 バービカン・ホール(ロンドン)
※コンサート前半の指揮はエサ=ペッカ・サロネンが担当

批評:Classical Source エドワード・クラーク


 エイドリアン・リーパー(注:イングランド出身)は、国際的キャリアの中期を海外で築いており、ロンドンに来てくれるのは嬉しいことだ。クラシックのメジャーなレパートリーを数々録音していることで知られているが、著名な作品に彼独自の演奏を作り上げる手腕に対する評判は、このコンサートで間違いなく高まった。
 マーラーの交響曲第5番は、その前の第4番が持つ天上的な雰囲気を知っていた当時の人々には驚きを持って迎えられたに違いない。明らかに、何かとんでもないことがその間に起きていたのだ。というのも、第5番は神経症的な憤怒で始まり、魅力あふれるウィーン風の節まわしをみせる第3楽章へと進展してゆき、作曲家自身の妻への愛の詩(例の有名なアダージェット)に10分(この演奏では)を費やし、挙句に、壮大に燃え上がる歓喜の中であれやこれやを片付けて終わる、といった具合なので。
 マーラー研究者のデリック・クックはこの作品について「分裂」があるとして書いている。たぶん彼は、この曲の出だしから既に聴こえてくる極端な機能不全感を過小評価しているのではないか。この作品は深刻に阻害された一人の人間が作り出した産物であって、我々がこの傷ついた感情の極限状態を前にして、厭うことなく静かに座り、しかも思慮分別を失わないでいられるというのは驚くべきことだ。
 リーパーはあらゆる点で本当に素晴らしかった。彼の演奏には一切の手加減がなかった。例えば、毒気をはらむ第1、第2楽章を通して現われる穏やかなパッセージは、聴いている我々の心をとろかす静穏な優しさで演奏し、中間楽章のスケルツォで見せた喜びに溢れる様子は人生をより美しく見せてくれるものだった。この楽章ではホルン奏者のマシュー・ヘッド(注:ファビアン・ファン・デ・ギーストの誤りとの指摘あり)を称賛したい。実際のところ、リーパーの演奏が何しろあまりに素晴らしかったので、調子のいい時のウィーン・フィルを聴いているかのような感覚を私は持ったのだった。指揮者の解釈の素晴らしさと、息をのむほどであったギルドホール響の能力の高さの勝利である。しかし、世界一流の音楽機関で学んでいれば、それも当然のことと言える。


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