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ギュンター・ピヒラー(指揮)Günter Pichler (Conductor)

オーケストラ・アンサンブル金沢 首席客演指揮者(2001年〜2006年)
                名誉アーティスティック・アドヴァイザー(現在)

   

 アルバン・ベルク弦楽四重奏団の第一ヴァイオリニストとして、ピヒラーは比類のないキャリアを経験してきた。結成以来40年近くにわたり、このカルテットと共に世界中のあらゆる主要コンサートホールの舞台に立ち、そして室内楽の偉大な傑作の数々を最高の水準で演奏してきた。それは多くの演奏者にとり、果たしえぬ夢である。

 何十年にもわたりそのような素晴らしい日々を過ごしてきた者にとり、音楽活動を続けること、コンサートで聴衆と接することは共に、生きる上でなくてはならぬ力の源泉になっている。そのため、2008年にアルバン・ベルク弦楽四重奏団が解散すると、当時既に20年以上続けていた指揮者としての活動をさらに活発化させた。

 ウィーン、ケルン、マドリードの音楽大学などで教授として精力的に教育に関わる一方、ウィーン室内管弦楽団、シュトゥットガルト室内管、イスラエル室内管、パリ室内管、ドイツ室内フィル、ガリシア王立フィル、トスカーナ管、ポメリージ・ムジカーリ・オーケストラ(ミラノ)、南西ドイツ・フィル、ハレ管、フランス国立リール管、ロイヤル・フランダース・フィル、ベネズエラ・シモン・ボリバール交響楽団、NHK交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢などと共演している。

 特にオーケストラ・アンサンブル金沢では2001年から2006年まで首席客演指揮者を努め、現在は名誉アーティスティック・アドヴァイザーの任にある。

 様々なオーケストラと共同の際には、作曲家の意図にできる限り近づくことと、演奏が演奏者と聴衆双方に同様に喜ばしい体験になることを大切にしている。オーケストラのメンバーとの関係では、ピヒラー自身キャリアの初期にオーケストラの団員であった経験も活かされている。18歳にしてウィーン交響楽団のコンサートマスターに就いて程なく、ヘルベルト・フォン・カラヤンによって今度はウィーン・フィルのコンサートマスターに指名された。このコンサートマスターの時代にピヒラーはクナッパーツブッシュ、クレンペラー、クライバー、更にはバーンスタイン、カラヤンに至る多くの偉大なマエストロたちをまさに身をもって体験している。

 指揮者ギュンター・ピヒラーが最も大切にするのは、オーケストラのメンバーを共に音楽を奏でる喜びに誘うことである。それには高い感度で相互に注意を向けあうことが重要だ。ピヒラーは互いの音を聴き合うよう仕向けることで、メンバーの自立を促進し、同時に彼らに信頼と責任感を与えている。このようにして演奏は実に生き生きとしたものになる。理由もなく、最初の演奏会も待たずしてしばしば再招請を受けているわけではないのだ。ピヒラーの成果については、批評家たちの熱狂的な反応にも表れている。「ピヒラーは世界一流の室内楽奏者かつヴァイオリニストであるばかりでなく、オーケストラを育てる力も世界一流であり、本物のスケールを備えた指揮者」であると認めたのはヴィーナー・プレセ紙。南ドイツ新聞は「ピヒラーは室内楽におけるその並外れた能力を、指揮台でも実にうまく発揮することができる。」と評している。マンチェスター・ガーディアン紙はピヒラーを「正確で、スタイリッシュな振り」であるとし、ハレ管弦楽団の弦楽奏者が「最高の出来」であったとしている。日本のクオリティ・ペーパーである朝日新聞は「熱い心と極めて精密なアーティキュレーション、完璧なテンポ、そして見事な緊迫感の高まりがこのNHK交響楽団の素晴らしい演奏の特色であった」と絶賛している。

 ピヒラーの指揮者としてのレパートリーは古典派、ロマン派の作品から20世紀ものや現代音楽まで網羅する。現代曲としては、ルチアーノ・ベリオの《ノットゥルノ》をルツェルン音楽祭で初演している。

(2014年3月現在)

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